やさしく包み込まれ,心から安らげる居場所を作りたかった.
施主は日本独自の「縁」などに見られる内外を中性的に紡ぐ「間」に魅せられる繊細な感覚の持ち主であった.
それ故リビングへのアプローチは変化に富む構成とし,光の採入れ方やシークエンスに関し積極的に考察することとなった.
またフロリストという仕事柄「花縁」と称される空間を設え,外部へと伸展させることでその内外の境界を曖昧としている.
ピアノ曲線で構成された「花縁」はローボード,ベンチ,ソファー,キッチンへと連なり,
内壁を覆う白に染められたOSBのストライプは,床のチークと対比を見せながら空間に緊張感と安堵を与える.
美しい花々に囲まれることはまるで舞い降りた花の女神が生み出す,やさしく柔らかな世界に身を委ねることに等しく,先に述べた私の想いは結実したように思う.