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建築設計においてその空間性や構成を二の次に,むしろインテリアデザインとしての建築の内皮の表層表現,あるいはインテリアデザインとしての形のある照明器具や置家具の選定などに重きが置かれる疑問視すべき世の趨勢に対する対立主張.
玄関の大きな吹き抜けの空中に置かれた茫漠たるスペースは至極抽象的な矩形の平面ながら北に9メートル連続する開口を穿ち,垂直に吹き降ろす吹抜けを介して山景を望む.視線は奥の間まで長く抜ける.
ただただ白く抽象化され,家具を置くことすら拒むその空間は縦縦に三次元的に拡張し,表面的なきらびやかさにではなく建築としてまとうべき空間性に人々の意識を導く.
白の空間を彩る,ときに強く,ときにニュートラルな朝靄のような光.
三次元的に複雑化する空間に,厚みという概念をもたない二次元としての面を表現した天井が浮遊する.
二次元としての面に光が灯るころ,その三次元空間はもっとも美しいときを迎える.
その抒情的な宵の薄暮を想う,白く装飾のないノクターン.