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「この盆栽が映える建物を造って下さい」と、眼光鋭い依頼主からの一言。以前造った和風旅館に共感を頂き、趣味の盆栽をどこにいても楽しめる、和の空間を要望された。敷地は札幌郊外の丘陵地、各要望を満たすにはあまりに狭く、高低差のある敷地に大きな中庭を取込むことが最大の課題であった。この中庭に向けて、夏の盆栽を眺めるためのw:6mの窓を求められ、ガラスのカーテンウォールの設計に2か月を要した。設計の最大の特徴は、このガラスを取囲む構造体として、高低差を利用した5層スキップフロアーにRC造とMJ門型フレームの混構造で1.5mの積雪を支えていることである。複雑な水平構面と6mの大開口により何度も構造事務所と協議を繰返してできた複雑な天井型に、「縦格子」を基調とする和の意匠を施した。和の伝統である縦格子は、欄間はもとより、照明、手摺、家具にいたるまでこだわり、その数は3千本を超える。素材も鉄、アルミ木、竹と多彩な質感を出している。L型の平面計画に外壁と同一素材の塀で敷地全体を囲い、中庭に四季折々の木々と盆栽棚を施し大きなガラスからこの中庭を見る造園設計も「光園居」の魅力である。外壁は、帝国ホテル由来のスクラッチレンガと、横櫛引き塗壁で和風感に西洋のモダンなイメージを織り交ぜ依頼主のもう一つの要望であるオリエンタルなイメージを表現した。室内は、外壁と同様の横櫛引きの塗壁をベースに、中国産のレンガで重厚な「和」表現しボリビアより取寄せた“聖なる木”「パロサント」を足元に施し、深緑に鈍く輝く独特の風合いが、盆栽との不思議な世界観を生み出している。南米では「神の木」とも呼ばれ、お香の原料にも使われる「パロサント」は、道内での施工例も無いほど貴重なもので依頼主の商売繁盛と健康と幸福を象徴する「光園居」の最も重要な素材である。(現在はワシントン条約により「パロサント」は伐採禁止となっている)屋上に設けた盆栽庭園に夕日に照らされ輝く風景は桂離宮を彷彿し、夜、ライトアップされたアカエゾマツやイロハモミジが依頼主の心を癒すと同時に「光園居」の非日常感を強調させることだろう。